三木さん夫妻は人のニーズを受け止めて柔軟に対応できる方達だなあと、たびたび感心した。私は、北海道の地図がよくわからないので、自分がいる位置が思い描けなくて残念と話した。すると亨さんは、木の板に北海道の地図を彫って、ピンを刺し、立体の地図を作って、私にそれを触らせながら、旅の行程を説明してくださった。
鳥のブローチづくりの手法が役立っています。 |
また、2日目からは、「UDプラザ」の皆さんが交代でやってきて、私達を友人のようにサポートしながら、さらにあちこち案内してくださった。弟子屈町では、硫黄山の噴気孔まで徒歩で登ったり、屈斜路湖半で乗馬を楽しんだりした。後ろ側の源流では、ジャスミンとガイドさんと一緒にカヌーに乗り、自分でカヌーをこぎながら原生林の中をゆったりと進んだ。阿寒湖温泉や釧路湿原などの景勝地を観光し、アイヌ文化にもふれた。
さまざまな観光客を案内するうちに、お店の人が、入り口の段差にスロープをつけたり、使いづらかった障害者トイレを直したり、街全体のバリアフリーが進みはじめているそうだ。
「UDプラザ」のような活動が全国に広がったら、私達はより自由に旅ができることだろう。私達にとって、旅ができることは、人生に喜びや目標が持てることでもある。地方では、公共交通機関を利用しにくいことなど、様々な理由で障害者が出かけて行きにくく、出かけて行く障害者が少ないために、ますますバリアがなくならない実情がある。だが、地方でも、障害のある観光客を積極的に迎えて案内することで、このように誰もが暮らしやすい町づくりを進められることがわかって、希望を抱いた。
その後、7月に友人が、私と盲導犬と泊まれる宿を探して近くの温泉地の観光会館に問い合わせた。そして、31軒の宿のうち、半数以上の17軒が補助犬との宿泊を認めていないことを示す、×印だらけの一覧表を受け取った。「身体障害者補助犬法」では、全ての宿泊施設は補助券を拒否してはならないことを規定している。そこで、この温泉地のホテル・旅館連合会で、県の担当者が改めて補助犬法の説明をすることになった。
しかし、弟子屈町の積極的な取り組みと比べると、いかにも残念だ。現在、障害者や高齢者は人口の3割以上を占める。そのニーズに応えてユニバーサルな観光地づくりを進めることは、観光地を蘇らせることにもなるだろう。北海道の小さな町、弟子屈町のみなさんの取り組みに学べることがあるのではなかろうか。
終わり。
終わり。